Easier said than done

言うは易く行うは難し

NHK『奇跡のレッスン』ラグビー編 エディー・ジョーンズ

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NHKで放送されていた『奇跡のレッスン・ラグビー編』前後編を観ました。

『奇跡のレッスン』は各スポーツ界トップの指導者がコーチとなって、将来を担う子供たちに1週間に渡って指導をするドキュメンタリー番組です。

今回はラグビー編。

自分の高校時代を思い出しながら観たんですが、高校生たちがうらやましくて仕方ありませんでした。

※練習内容は映っていたもののみで正確ではありません

エディー・ジョーンズと目黒学院

今回のコーチは前回のラグビーW杯で日本を指揮し、強豪南アフリカを破る番狂わせを起こした立役者でもあるエディー・ジョーンズ。現イングランド代表HCであり、今年の年間最優秀コーチにも選ばれてた、まさに最強コーチです。

エディーがこの番組のオファーを受けたのは、W杯での番狂わせが“奇跡ではないことを伝えるため”だったそうです。

 

そしてエディーが指導するのは東京・目黒学院ラグビー部。1959年創部で過去に5回全国制覇を成し遂げている古豪です。近年は低迷が続いていましたが、2013年の第93回全国高校ラグビー大会に22年ぶりに出場し、今春の選抜大会にも出場しています。

部員たちの掲げる目標は「日本一」。しかし、春の選抜大会では優勝した桐蔭学園に惨敗。監督・コーチ陣はまだ足りないものがあると感じていたようです。

 

今回の指導は番組史上最短の5日間。最終日には専修大学の1~2年生主体メンバーとの試合を予定していました。果たしてどう変わるのか。

前編~すべての瞬間が上達のチャンス~

1日目

練習内容(目黒学院の普段の練習)  ・1対1
 ・3(DE)対1(AT)

→試合状況に即していないと指摘

 ・試合形式のアタック&ディフェンス

→ディフェンスのコミュニケーション不足

この日は普段の練習を見学してからの指導でした。

まずエディーが指導したのはディフェンスについて。練習を見てディフェンス、特にコミュニケーションに問題があると感じたからです。

ここでまず、ディフェンスをする上で大事なのは

  • コミュニケーション
  • ボールを持っていない人の動き
  • 体を正面に向けること

と説明。

番組内で特に口酸っぱく言っていたのがコミュニケーションについて。

ただ声を張り上げるのではなく、“誰が誰をディフェンスするか”、“誰が外を見て誰が内を見るか”など、適切に声を掛け合うことが大切で、声があればそれがエナジーになり、プレーのスピードも上がると指導していました。

 

「声を出せ!」というのはどんなスポーツでも言われることだと思います。特にラグビーの場合、状況判断の連続なので適切なコールが重要になってきます。しかし、実際のところ、ほとんどはただ大声で叫んでいるだけです。(エディー曰く金曜の居酒屋状態)

それはどういう声が必要なのか、なぜ声を出す必要があるのかわからないから。

そういうところも瞬時に見抜いてわかりやすく説いていくエディーの洞察力と説得力はさすがだなと思いました。

2日目

練習内容(主にディフェンスの練習)

午前(90分)

 ・1対1(バインドと引き上げ意識)
 ・2対2
 ・3対3

午後(90分)

 ・1対1、2対2、3対3

(映像は少ないですが、おそらく午前の復習)

 ・試合形式のアタック&ディフェンス

→攻撃が詰まったらターンオーバー

2日目は5:30からのアーリーワークから始まりました。前日同様ディフェンスの練習が続きます。

エディーは生徒たちができていない部分があるとすぐに練習を中断し、

  • タックルはがっちり捕まえて引き上げる
  • タックルする時の構えは身長の75%の高さ、当たる直前に低くなる
  • ボールも人も両方見ることが大事(だから連携が必要)
  • 外のディフェンスは内より体一つ分下がる
  • しっかり隣とコミュニケーションとって

とアドバイスを送ります。

 

できない生徒には少し皮肉をきかせて指摘しつつ

  • すべての瞬間が上達のチャンス
  • 日本一の練習をした者が日本一になれる

と気持ちを盛り立てます。

 

午後は朝の練習を復習(おそらく)してから試合形式の練習。

エディーはチーム練習を90分以上行うことはないそうです。とにかく質を求める。

この日もとことん走らせて、練習強度を上げていました。

 

エディーは番組内で「試合と練習で最も違うのストレスのかかり方で、それを克服するには練習からどれだけ試合に近づけられるかが重要だ」とも語っていました。 

3日目

練習内容

練習風景はなし

この日はエディーの講習会にカメラが付いて行っていました。

集まったのは日本のトップの指導者たち。パナソニック、サントリー、慶応大学などのコーチ陣の姿がありました。

映像を見るに、この講習会はなぜ日本が南アフリカに勝てたのか、コーチとしてどう指導していくべきか、みたいな内容だったと思います。

 

前回のW杯では9か月前には相手国の分析(得点パターンなど)を終え、どう戦うかを選手たちに落とし込んでいったそうです。

指導者に必要なことは「しっかり分析して選手に理解させることだ」と語っていました。そして、世界一強いからといってオールブラックスを真似するのも意味がないとも。

特徴(日本だったら小さいけど素早い)を生かすことが大事だと言っていました。

 

これで前編は終了です。

2日目の午後あたりからエディーの細やかな指導のおかげで、どう声を出せばいいか、どう動けばいいかが明確になって、手ごたえを感じはじめている生徒もいるようでした。

後編~いい練習が奇跡を必然に変える~

4日目

練習内容(主にアタックの練習)

午前

 ・ウォーミングアップ

(ボールの取り合い、ボールを一度地面につけて味方にパス)

 ・3対3

午後

 ・試合形式のアタック&ディフェンス(2日目と同じかたち)

→途中で数人入れ替えて活性化

この日からはアタックの練習。アタックでも大事なのはコミュニケーションです。できていないと練習を中断して何度も指摘していました。

さらに、

  • パスしたら背番号が見える位置でサポート
  • 相手の肩の向きを見てその逆に走る

などの具体的なアドバイスを送ります。

 

この日は朝のアーリーワークからレギュラーチームと控えチームの差が浮き彫りに。レギュラーチームに比べて控えチームは声が少なく、どこか自信なさげな表情で練習していました。

練習後エディーが控えチームに「午後からはもっとプレッシャーをかけろ」と声を掛ける場面もありました。

 

これはどのチームにもありがちで、僕も高校時代控えチームにいることが多かったので、この生徒たちの気持ちがわかるような気がします。

“レギュラー>自分たち(控え)という思い込み”があったり、“この練習はレギュラーのためにあるんじゃないか”なんて思ったり。もちろんレギュラーになりたい気持ちはありますが、どこかで弱気になってしまうんですよね。

でもチームを強くするためには控え組の強さも必要です。

 

ということで、4日目の午後は試合形式の練習をしつつ控え組のメンタル改善も進めていました。

まずは試合形式でレギュラーチームVS控えチームで行うことに。

控えチームも円陣を組んで気合いを入れていましたが、ボールを欲しがる声が出ず、攻撃が上手くいきません。

そこでエディーはレギュラーチームと控えチームを数人入れ替えます。すると控え組の動きがよくなり、積極性も出てきました。

 

控えチームのメンバーも適切な声を出してくれる仲間がいることで自分が何をすべきか明確になったのかもしれません。

これがエディーの言う“声のエナジー”なのかもしれません。

5日目

練習内容

練習風景はなく試合のみ

最終日となる5日目は専修大学の1~2年生主体のメンバーとの試合です。

これまで適切なコミュニケーションを取る練習をしてきただけあって、トライを取られてもしっかり声を掛け合って修正できていました。ターンオーバーの時もフォローが素早く声を出してトライに繋げるなど成長の跡が見られました。

 

試合結果は、3トライ−2トライで目黒学院の勝利。負けるのが大嫌いなエディーも笑みを見せて喜んでいました。

 

これで5日間のレッスンは終了。

このあと目黒学院は夏の菅平合宿で強豪校と練習試合をこなし、花園予選を勝ち抜いて4年ぶりの全国大会出場を決めました。

年末から正月すぎにかけて行われる全国大会で目黒学院の生徒たちがどんな戦いを見せてくれるのか楽しみです。これでまた一つ正月の楽しみが増えました。

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『奇跡のレッスン・ラグビー編』の感想

今回エディーが指導していたこと自体に目新しいことはほぼなかったように思います。コミュニケーションのこともタックルのことも日本のほとんどの指導者は同じようなことを言っているはずです。

じゃあ何が違うのか。やはり伝え方だと思います。エディーはどうやったら理解してもらえるかを一つ一つ突き詰めている感じがしました。声の出し方にしても「声を出せ」ではなく、どういう声が必要なのかを説得力を持ってわかりやすく細かく伝えます。

また、生徒への接し方も計算されていました。一人ひとり名前で呼んで、生徒をしっかり見てその生徒に合った接し方をしていたように思います。そうすることで生徒に自信を持たせ、マインドセットを変えていました。

実際、この番組の最初は控え組だった2年生のPR岩上君はエディーの声かけで自信がつき、専修大学との練習試合ではスタメンに抜擢されました。この5日間で目黒学院の監督・コーチが驚くほどの成長を遂げていました。

この番組でエディーの分析力や洞察力の一端が垣間見れておもしろかったです。

 

あとは、単なるラグビーファンとしての戯言ですが、エディーが日本に関わってくれることをありがたく感じました。

現イングランド代表HCが忙しいスケジュールの合間を縫って日本の高校生を5日間指導し、そのうち1日は日本のトップレベルの指導者を指導している。イングランド代表のHCに就任しても日本に来たり(W杯の視察?)、日本代表にコメントしたりしていましたが、日本代表のHCを辞めても日本ラグビーの底上げのために力を貸してくれているということが嬉しかったです。

 

エディーは奥さんが日本人、ラグビー指導者として本格的にキャリアを始めたのも日本ということもあって、日本とは縁が深い部分があるので、これからも何かしらの形で関わってくれたなと思います。

さいごに

勢いで書いたらごちゃごちゃになりましたが、すごくいい番組でした。高校生はもちろん指導者にも気づきを与えてくれる番組だと思います。

見逃した方は12/21(23:00~23:50)に前編、12/28(23:00~23:50)に後編の再放送がNHKのBS1であるようのでそちらでぜひ。

再放送予定 - 奇跡のレッスン ~世界の最強コーチと子どもたち~ - NHK